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50代の顔に責任をもて

昔、親から「50代になったら自分の顔に責任をもちなさい。」と言われました。それがどういうことかは、頭から離れない疑問であり、テーマであり続けています。単なる加齢による老化した顔のことではありません。しかし、それが少し解りかけているのです。「人間50年、下天の内を比ぶれば夢幻の如くなり」と人生わずか50年ともいわれました。

「50代の顔」というのは、50年の人生を過ごし、体験して人格を磨いた結果が顔に現われてくるという意味だと私は理解しています。最近は人の顔を見ると、人それぞれのこれまでの人生が顔に現れているのが実感としてわかります。凄まじい人生を送ってきた人の顔はそれが現れます。誠実な人生を送ってきた人の顔は正直さが現れています。人を騙すような人生を送ってきた人の顔、自分の人生に自信をもって生きてきた人の顔、サラリーマン人生を真面目に送ってきた人の顔、それぞれの人がそれぞれの人生の顔を持っていると言っても過言でないと思います。その人生の重みをその顔から少し伺えるようになってきたように思えます。

そして、この思いで1月下旬のフジテレビの社長及び役員の会見の顔ぶれを見ると、50代以上の顔なのに非常に顔が良くないのです。日本のマスコミ大手の経営者の顔とはとても思えず、苦しい決断をしている顔、危機を乗り越えてきた顔ではありませんでした。実に平々凡々な顔で危機対応がなっていないのです。だから11時間にも及ぶ記者会見をしたにもかかわらず、何ら結論を得られたようには思えなかったのです。そして、このゴタゴタは人の記憶が薄れるまで延々と続くでしょう。

この騒ぎは何故起きたのでしょうか。詳細は分かりませんが、トップのトップとしての能力の欠如が第一の原因だと思われます。経営能力が欠けた役員が昇進していき、トップになる。そして50代の顔ができていない上に、ごますり、忖度、おもねる、全体を考え不正を不正と言えない、間違いを正せず、正義の声を上げられない体質を作っていったのではないかと思えます。

大手の会社に入社した頃の社員は希望に燃え、正義感溢れる人達であったと思います。その人達が長い年月をかけて、長い物には巻かれよ、強い者には負けろ、そうでないとサラリーマン人生がやっていけない、そんな人達だらけの組織になってしまった。その証に、このトップの人達の顔が芯の通っていない顔になるのではないかと思えます。

経営者とは、磨き上げ叩き上げられて、経営能力も備えたうえで立身出世していかれる人のことでしょう。今後、社会に通用するためには、真面目に努力し、豊かな人生経験を積んで、人格の形成を成し遂げた経営者が、50代の良い顔を持った人材を抜擢できるような健全な組織こそが必要です。

本物を見分ける力、美しい物を見分ける力、これは日本人が最も苦手とするところです。その為には自分磨きをしなければなりません。若い頃から絶えず、文化・芸術・スポーツ等に励み続けることが大切。そのうえで、社会、経済と広く世界を見、あらゆる物を見据えながら、人を見る力を蓄えていかねばなりません。

最後に物事を解決するのは時間と人なのですから。そういう私も自分の顔は鏡を通してしか見られないのです。自分の顔に責任をもてるかは自分では解らないことです。人生は一瞬の積み重ねで、それが50代の顔をつくり、生涯を通して良い顔になれるよう努力をし、懸命に生きるのみです。

不動産遊民

都市研究家 調(しらべ) 亮(わたる)

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